特集

「エアソフトガン超入門」 第3回:サバゲフィールドを一変させた「次世代電動ガン」

ドイツ流クラフトマンシップ溢れるHK416Dの魂をエアソフトガンに!

 それではいよいよ今回教材とした次世代電動ガン「416D」を紹介していこう。第2回で紹介した「Mk18 mod.1」も、今回紹介する「HK416D」も、元になったのは1990年代半ばから使われているコルト・ファイヤーアームズが製作した米軍の正式ライフルの「M4A1」だ。「HK416D」は銃器ファンからも人気が高いサブマシンガンの「MP5」、アサルトライフル「G3」シリーズなどを開発したドイツの銃器メーカーH&K社の製品である。

 実銃の「M4A1」はM16を小型改良したものだが、不満点も抱えていた。過酷な条件での動作不良、マガジン形状での不具合などが指摘されていたのである。このためコルトはM4自体の改良を進めていたが、H&Kや、レミントン、シグなどいくつかの銃器メーカーで米軍への大量納入を狙った「クローンM4」が作られることとなる。「HK416D」もそのように生まれた銃だ。原型機である「HK416」にDefenceの文字をつけた公的機関向けモデルで、目標であった制式採用はされなかったものの、米軍特殊部隊で採用される銃となった。

【堅牢さを重視したM4クローン】
「HK416D」はドイツメーカーH&Kが作っているだけに、“厳つさ”がある。特にストックのごつさは印象的だ

 「HK416D」の大きな特徴はドイツらしい“厳つさ”にある。ドイツは堅牢さを重視するのが特徴で、「HK416D」はグリップや、特にストックが非常に厳つい。内部機構にも改良が加えられ信頼性が増している。だからこそ過酷な環境下で作戦を遂行する米軍特殊部隊に採用された。

 ただこの厳つさを嫌う人もいて、「アメリカ海軍特殊部隊SEALチーム6“DEVGRU”」はHK416を部分的にM4化したカスタムガンを使用している。ストックやグリップなどをM4のものに交換しているのだ。ビンラーディン暗殺作戦「ネプチューン・スピア」で使用されたと言われ、映画「ゼロダークサーティ」でも登場している。この「DEVGRU」も東京マルイは次世代電動ガンとして展開している。

【次世代電動ガン「DEVGRUカスタム HK416D」】
こちらは部分的にM4化したカスタムガンをモチーフにしている。グリップやストックの形状がM4A1のものになっている

 次世代電動ガン「HK416D」は実銃を採寸した事で、ホンモノに近く造られている。グリップの角度など、電動ガンのユニットとの兼ね合いでやむを得ない部分もあるが、重さも含め実銃の感触にこだわっている。

 細部でまず目に着く大きな特徴は、HKらしく肉厚な伸縮式ストック。余裕で「8.4V ニッケル水素1300mAh SOPMODバッテリー」を収納できる。また、バッファーチューブ(ストックを支えているパイプ)に300gの重りを入れて前後させて振動を発生させているので、射撃時の衝撃の伝わり方もホンモノの同様、肩に来る小気味良い反動(リコイルショック)を味わえる。

【厳ついストック】
非常にごついストック。バットプレートがラバーになっているのもM4からの改良点。落下時や、肩への衝撃を和らげる

 レールシステムに載せられた、ゴツゴツしたリアサイトとフロントサイトも印象的だ。ドイツの兵器らしさを感じられる部分だが、実際に使っている特殊部隊員からは、精密射撃には向いているが咄嗟に狙いにくいという意見が多いと言われる。自分に合ったサイトに変えるのも良いだろう。

【堅牢なサイト】
フロントサイト、リアサイトもごついデザインだ
好みでサイトを差し替えるのも良いだろう。「NEWプロサイト」など様々なパーツに対応している

 H&K社らしい改良点が、アンビタイプのセレクター。アンビとは左右どちらからも操作が可能な機構で、M4A1にはなかったもの。本物の銃は銃本体を貫く形で左右のセレクターが繋がっているが、発射機構が内部を占める次世代電動ガンでは、ギヤを介して左右から切り替えられる様に造られている。左利きの人は無論、状況によって左腕で構えた場合に非常に役立つ。

【セレクター】
左右どちらからも操作できるセレクター。フルオート(連射)は「30(発)」と記され、セミオート(単射)との違いが視覚的に表現されているのはHKならでは

 マガジンもリアルサイズで、「M4A1」用とは角度と全長が変わりつつも共通で使える所もホンモノと同じ。BB弾を撃ちきると作動が止まり、マガジンを変えてオートストップを解除する事で再度撃てるのはホンモノと同じ操作で、次世代電動ガン「M4シリーズ」の大きな特徴だ。因みにフルオートでは約3,000発、セミオートでは約1,500発の発射が可能(条件によって変わるのであくまで目安なので注意)。

【ボルトストップ】
小判状の部品がボルトキャッチレバー。スタンダード電動ガンでは稼動しない部分だ

 さらにBB弾を撃つ真鍮製の銃身(インナーバレル)はハンドガードの先端までとなっているので、先端部の銃身がネジ式で短くできる「バレルチェンジシステム」を採用している。短くすると室内などで取り回しが良くなる。

【オートストップ】
チャージングハンドルを引くとボルトを模したカバーが下がって弾道の調整(ホップ調整)が簡単にできるのは電動ガンの特徴

 次世代電動ガン「HK416D」は、モチーフはクローンM4とは言え、M4のパーツをそのまま使うところは少なく、マガジンも含めて新規の金型で制作されている。メカボックスも、アンビセレクターなどに対応するため、改良型となっているという。

 電動ガンにどうしても必要なモーターやメカボックスを収納する関係で、グリップ部などアレンジが施されてはいるが、ホンモノから採寸して、極力ホンモノに近い外見と操作感を実現した究極の「電動HK416D」と言えるだろう。

電動ガンの次の姿は?

 品質の高い東京マルイの次世代電動ガンだが、最新の流行をまだ取り入れてない部分がある。昨今の電動ガンはFET(電界効果トランジスタ)を使った電子トリガーを採用している。海外製品や国内サードパーティではFETが標準になりつつあるが、東京マルイでは今も機械式のアナログスイッチを採用している。従来のアナログスイッチでは長時間使用していると、接点の摩耗や焦げが故障に繋がる。FETはこういった故障を防げる。

 東京マルイがアナログスイッチにこだわるのは、システムを更新するコスト問題やスペースの問題、さらにFETの誤動作をなくしたいと思っているが、万一のために安全装置が必要なのだ。一方で新規に設計した電動ショットガンの「AA-12」、「Mk46 mod.0」に到っては4つの安全装置を設けた上で、FETを採用している。

 もう1つ気になる今後の問題としては、リコイルのない「スタンダード電動ガン」の存在。「スタンダード電動ガン」を望む声もまだあることから継続していきたいと考えているとのこと。20,000円台で購入できる「スタンダード電動ガン」の需要は根強いのだ。

 そして2021年は東京マルイの電動ガンが生まれて30周年となる。次の30年へ向けた取り組みも企画されているとの事だ。来年東京マルイの電動ガンに大きな変化があるかもしれない。ここは注目したいところだ。

ユーザー層も変わっていく中、東京マルイは新製品に様々なアイディアを持っているという今後の情報にも注目したい

 世界に先駆けて電動ガンを製品化し、その後30年間圧倒的な第一人者であり続けた製品とメーカーというのも非常に希有であろう。それだけ、電動ガンという製品はエポックメーキングで革命的でもあった。パワーソースとしてのガスの先行きは社会的な問題もあって「ガスガン」は将来が見通せない難しい面があるが、「電動ガン」はサバイバルゲームと共にずっとあり続けるだろう。

 純粋にホビーとして楽しむだけでも良いが、その歴史や、個々の素材や機構の意味を考えるのもまた楽しみだと思う。次回はエアソフトガンの“原初”とも言えるエアーコッキングガン、そして人気の高いスナイパーライフルと、そのスタイルについて掘り下げていきたい。