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「エアソフトガン超入門」 第6回:木製のストック、シンプルな機構……世界の歴史を変えたアサルトライフルを再現! 「ガスブローバックマシンガン AKM」

弾切れもきちんと再現する新機構、ガスタンクとしてのマガジンへの注力

 外見と同じように大きな魅力を持つのが機関部である。これもガスブローバックモデル化する上で、M4や89式各シリーズ用とは全く違うAKM用ならではのハードルが潜在しており、それらの開発時のデータ転用だけでは解決できない未知の不具合が頻発したとのことで、ようやく耐久性能などそれらの難題解決にこぎ着けたという。

 今回は特許出願中のためボルトは抜き出して確認することは許されなかったが、ガスブローバックタイプのエアガンならではのリアルな外観を備えているということだ。ホンモノのAKシリーズの特徴的な部分である、ボルト先端のロングストロークガスピストンもしっかり再現されているという(本来のガスピストンとしての機能はないが)。

 余談だが実はこの部分、かつて1994年発売の「電動ガンスタンダードタイプ AK-47」の開発当時、同じガスピストンの位置にただの骨組みとして内蔵されている六角形の芯材を、隠し要素的にリアルなガスピストンの形にする要望案が挙がったものの、「分解しなくては見えず、その割にコスト高でメリットがなさ過ぎる」との理由でボツになったこともあったのだそうだ。

【ボルトカバーを外す】
ボルトカバーを外した姿は実銃と同じ雰囲気になっている。大ケガをする可能性が高く、大変危険なため、実際に行なうのは厳禁だが、実銃同様この姿での射撃も可能

 また、今回の「ガスブローバックマシンガン AKM」最大のセールスポイントは、最終弾を撃ち尽くした直後に“ハンマーダウンした状態で作動停止する”というホンモノのAKシリーズと同じ作動パターンをリアルに再現している点だ。

 ホンモノの同カテゴリー内のM4シリーズや89式の場合はボルトが最終弾発射の反動で後端まで後退した瞬間に「ボルトストップ機構」によって後退したまま保持されてエジェクションポートが開いたままとなる、いわゆる“ホールドオープン”の状態となる。東京マルイのエアソフトガン「ガスブローバックマシンガン M4」シリーズ開発時に「 Zシステム」という高い耐久性を備えた新機構でそれを再現した。

 一方ホンモノのAKシリーズにはそのようなホールドオープン機構は搭載されていない。最終弾を撃ち尽くした直後にも、ボルトは後退直後に再前進しエジェクションポートが通常通り閉鎖され、外観上は残弾がある時との変化がない。だが内部チャンバー内に装弾されているわけではないので、再度トリガーを引くと“カチッ”というハンマーが空動作した打撃音だけが響く。

 実はガスガンや電動ガンではこの動作を再現することが難しいのだ。ホンモノの実包の場合、弾丸とそれを発射する分の火薬等を収納した薬莢とを組み合わせたカートリッジの状態になっている。だがガスブローバックタイプや電動タイプのエアソフトガンの場合では、そのように動力源がBB弾とパッケージされているわけではなく、また一般的にその動力源は装弾数よりも遙かに大量のエネルギーを蓄えているため、BB弾を撃ち尽くした後もトリガーを引けば銃本体の機構は空作動を続行してしまうのだ。東京マルイは「ガスブローバックマシンガン AKM」のために新システムを開発、Zシステム同様に特許を申請している。

【特許出願中のメカニズム】
マガジンの上部と内部が連動し、ハンマーダウンを実現させた特許技術。今はまだ出願中とのことでモザイク処理を施した

 機構的にBB弾の有無を判定することで機構の作動をストップする、この仕組みを開発するのは、かなりの時間を要したとのこと。ハンドガンのスライドがオープンした時のように見た目ではっきりわかるものではない、非常に地味ではあるが、「AKファン」としては垂涎ものの機構だと言える。

 なお、この機構は内部の切り替えレバーでオフにする事で、弾を発射せず故意に空作動のみを行なわせてブローバックのリコイルショックだけを楽しむ、いわゆる“空撃ち”も可能。また銃を分解せずホップダイヤルを調整できるというところも特徴だ。

 マガジンは、BB弾の装弾数35発(予定)で、アルミ一体成型となっている。このマガジンはM4シリーズの1.5倍の長さの上に曲がりがきつい為、射出成形法で製造することが難しく、特殊な「スライド回転金型」を採用しているという。

【マガジン】
マガジン。総弾数35発で、アルミ一体成形となっている

 この曲線を描くマガジンがガスタンクを兼ねているところもこだわりだ。形だけ曲がった弾倉の姿にして、内部に別体の四角いタンクを入れてしまうのは容易だ。しかしそうするとガスの容量が減ってしまう上、部品点数が大幅に増加するため価格上昇が避けられない。たっぷりガスが詰められて、安定した射撃を楽しめるようにしたい、東京マルイとしては譲れないコダワリなのである。それでいながら価格もできるだけ抑えたいとのことだ。

「これがAKMの射撃感だ!」期待のはるか上を飛び越えるド迫力のリコイル

 それではいよいよそのリコイルを実際に体験していきたい。まずは弾を弾倉に送り込むために銃の右側にあるチャージングハンドルを引く。

 実銃のAKシリーズは、セイフティオンになっていてもこのチャージングハンドルを半分程まで引けるようになっているが、東京マルイはホンモノよりも遙かに複雑にならざるを得ないガスブローバックならではの機構誤作動による暴発や、ボルトの傷つき等への対策のため、ハンマーの位置によって異なるが、最大でも40mm程までしか引けないようになっている。引くことはできるがその距離はほんの少しだけ、というわけだ。

【チャージングハンドルをコッキング】
セレクターをフルオート(真ん中)もしくはセミオート(下段)にすると、ボルトハンドルをコッキングできるようになる

 セイフティをオフにしてレバーをしっかり引くと弾が薬室に送り込まれる。そしてトリガーを引くと、激しい勢いでボルトが後退、甲高い金属音が響き渡り、弾が発射される。今回は空撃ちだが、島村氏が撃っている姿を見た時、自分が撃った時、どちらも思わず声が出た。

【「エアソフトガン超入門」 「ガスブローバックマシンガン AKM」の大迫力のリコイルショック】

 筆者はAKシリーズのエアソフトガンを複数持っているAKファンの1人であり、様々なエアソフトガンを撃ったが、AKMらしい反動の強さ、作動音から伝わるホンモノ感共に、今まで経験した事の無い迫力を感じた。

 次世代電動ガンのようにリコイルショックの演出のために、追加ウエイトを動かすのではなく、ガス圧で薬室が動く際の内部機構が激しく動く金属音、そのリコイルショック……火薬の炸裂音こそしないものの、その衝撃は“銃を撃った感触”をしっかり味わえると感じた。

 銃を構えた両手や、ストック、銃に押しつけた頬などあらゆる部分でその衝撃を体感できた。そしてその強いリコイルは、レシーバーの中の機構でしっかり産まれているのがわかる。その衝撃は、開発者が強くこだわった“AKの機関部ならではの味付け”だと感じた。この感触は、これまで他の商品では感じられない衝撃で興奮させられた。これは筆者のようなAKファンにとってぜひ体験してもらいたいと思った。思わず、「この銃を手にするために、貯金をしよう」と瞬間的に思った。

【射撃感】
動画を撮っている際の撮影なため島村氏はトリガーに指をかけている。、そのリコイルで島村氏の身体が震える様や大きな音はAKファンである筆者にはたまらないものがあった
発売はもう少しだけ先になる。とても待ち遠しい

 島村氏はファンに向かって「発表してから1年経ってしまって、永らくお待たせしてしまって申し訳ありません。なるべく早くお届けするべく、鋭意制作中ですのでもうしばらくお待ちください。AKMのために新規開発したメカボックスで、とにかく撃ってもらえれば違いが解ると思います。さらに、これをベースとして色々なバリエーションを展開する事も考えてますので、その辺もご期待待下さい」と語りかけた。

 未だ量産前の最終チェック段階ではあったが、東京マルイの「ガスブローバックマシンガン AKM」は、これまで何丁ものAKシリーズを持ってきた筆者としても、「ガスブロAKM貯金」開始を決意する程の出来だった。外観、機構、実射、どれを取っても今までのAKシリーズにはない「ホンモノ感」に溢れていると感じた。

 AKシリーズは独特の魅力がある。そして「ガスブローバックマシンガン AKM」はその魅力をしっかり体験できる商品だと感じた。世界で最も知名度のある「カラシニコフ自動小銃」のスタンダード「AKM」がどういう物か、日本に居ながらにそれを体験できるというのは、すごいことだと思う。発売日を楽しみに待ちたい。