特別企画
ヘタ仙人の「プラモデルを楽しもう!」、デカールを貼ってみよう!
2021年7月28日 00:00
軟化剤にノリ成分を足した「Mr.マークセッター」でデカールがよりくっつく!
ここまでが、いちばん基本的なデカールの貼り方です。次に、デカール用の道具を使ってみましょう。デカール用の軟化剤と、デカール用のノリです。
Mr.マークソフターは、デカールをふにゃふにゃにしてくれる液体です。デカールはそもそも極薄で、パーツの凹凸にフィットはしてくれますが、とはいえモールドなどの細かい凹凸となると、さすがにピッタリとはいかなかったりしますし、ムリに綿棒でフィットさせようとすれば、破損するおそれだってあります。
そこで、軟化剤を使うのです。すると細いモールドにもデカールがしっかり食い込んでくれます。なおデカールに付いているノリではなくて、この軟化剤だけを使ってデカールを密着させるのが本道のようなのですが、私の技術レベルでは根拠を示してその方法を解説できないので、興味のある方は検索してみてください。まあともあれ、デカールをフニャフニャにして密着させてくれるので、あると重宝します。
そして、その軟化剤に、ノリ成分が足されているのがMr.マークセッターです。なお他の商品では軟化剤が入っておらずデカールのりだけのタイプもありますが、フニャフニャにしてくれてさらにノリもあるんならこっちがいいかな、と、私はこれを使っています。
「ねえちょっと待ってよ。デカールって、ノリがもともと付いていて、それを水で溶かして貼るって話だったでしょ?」
と思った方。確かにその通りなのですが、たとえばノリが流れてしまう場合もあったりして、しっかりくっつけたいのであれば、別途デカール用のノリはあったほうがよいです。
さらに言えば、今回は塗装をしていない面にデカールを貼っています。デカールは、まあだいたい、普通は塗装した面に貼ります。塗装していない場所にデカールを貼ると、経験上剥がれることも多いんですよね。なので、ノリを使ったほうが確実ではあります。
というわけで、さっそくMr.マークセッターを使ってみましょう。とはいえ、使い方は簡単で、デカールを貼りたい場所にさっとひと塗り。その後デカールを貼るというだけです。
ただ、ツヤ有りの塗装をしていたり、ましてや無塗装のプラモデルの表面はツルツルしています。ゆえにMr.マークセッターは写真のように弾かれてしまいます。なので、塗るというよりはマークセッターの水滴を「置く」と言ったほうがいいかもしれないですね。いずれにせよ、デカールを貼り付けたら、先ほどの手順同様に綿棒でなじませます。なお、「ノリ」と言いつつそんなに粘性はないので、ベトつきは心配しなくて大丈夫です。
さあ! こうして、すべてのデカールを貼り終えました!
あ、ちょっと気泡が残ってる……。こういう場合は、Mr.マークセッターかソフターを上から塗ってリカバリーできるかもしれなかったのですが、ちょっと怖いのでこのままにしておきました。
そして、デカールによるマーキングを施したダブルオークアンタがこちら!
いかがでしょう? 単に組んでシールを貼った状態よりも、かなり細かさも増してかっこよくなったと思います。ちょっとアップで見てみましょう。
いやはや、HGではあるものの、デカール作業は数も多いし細かいしで、意外とたいへんなのですが、HGが格段に細かくなりやっぱりいいですね!
クリアーコートによって、さらにカッコ良く、デカールを剥がれないようにする
……と、今回はまだ終わりません。さらに、ちょっとオススメの遊び方をご紹介します。それは、「クリアーコート」です。デカールを貼ったうえから、いわゆる「トップコート」をしてしまおう、というわけです。
ですので、缶スプレーでもできてしまいますので、お試しを。
今回クリアーコートするのは、2つの理由からです。1つ目は、やはりデカールの剥がれへの対処です。ノリを使ったとはいえ、やっぱりちょっとデカールが剥がれそうだなと。上からクリアーをかければその心配はありません。しかも、ツヤツヤキラキラになるという素晴らしい(というか、本来そのためにクリアーを使うわけですが)効能があります。
そしてもう1つ、こちらが、クリアーコートをやりたかった大きな理由なのですが、研ぎ出しをしてみよう、と思い立ったわけです。
研ぎ出しというのは、デカールを貼り付けた面を、平滑にする行為です。デカールは、極薄とはいえ、厚みがないわけではありません。光が反射すれば、それなりにわかってしまいます。先ほどの、ヒザの写真を再度見ていただきましょう。
この盛り上がりを、クリアー塗料で「埋めて」いくのです。具体的には、クリアー塗料を塗って、デカールを貼っていない部分の高さを増し、次いでデカール部分のクリアー塗料が盛られた部分を削れば、面が平滑になる、というわけですが、見ていただいたほうが早いので、やってみましょう。
なお、原理的にはスプレーでも可能ではありますが、今回はクリアー塗料の濃度調整などが簡単なのと、私はスプレーではやったことがないので、エアブラシを使っています。使った塗料はこちらです。
ごく普通に売っているクリアー塗料ですね。なお研ぎ出しをする場合は、ウレタン塗料などを使ったりしますが、私は使ったことがないので、このクリアーカラーを使いました。
まず準備ですが、通常の塗装と同様に、パーツを分けます。「基本上からぶっかけるだけだからパーツを分解しなくてもいいのでは?」という話はありますが、完成したままだと塗料が奥の方に入ってくれないなどのデメリットもありますから、なるべく塗りやすくなるレベルで分割したほうがスムーズですね。
その後は、デカールを貼ったパーツと貼っていないパーツに分けておきました。貼っていないパーツは、一回クリアーをかけたら終わりにすればよいのですが、デカールを貼っているパーツは、何回かに分けてクリアーを吹いて、塗膜を厚くせねばなりませんから。
なお、デカールを貼っていないパーツの作業は、クリアーを吹くだけでおしまいなので割愛します。
さて、デカールを貼っているパーツについては、まずはクリアーを吹くわけですが、一番最初に、表面がツブツブになるように、ちょっと距離を離して吹きます。「砂吹き」といいますが、最初からデカールに対してクリアー塗料をたぷたぷに吹いてしまうと、デカールに塗料が浸透して傷つく可能性があるのだそうで。「~だそうで」というのは、私は経験したことがないので、イマイチわからないのです。が、そういうものであれば用心にこしたことはありません。
原理的には、クリアーがツブツブになっているということはある程度乾いた固形物が付着するというわけで、固形ゆえにこれらがデカールに浸透することはない。そして砂吹き層が後からやってくる液体クリアー塗料へのシールドになる、ということです。スプレーでやる場合も、かなり遠目からふわーっとかけたほうがいいでしょう。
さて、ツブツブが終われば、本格的にクリアーを吹いていきます。とはいえ、最初からドカンと吹くのではなくて、薄く吹いたら一旦待って、もう一度吹いて、と2、3回軽めにしたほうがいいでしょう。でないと砂吹きした部分に大量のクリアー塗料が襲いかかって、せっかくの砂吹きの意味がなくなってしまいますから。
何度かコートをしたら、いよいよどばどばとクリアーを吹き付けます。それはもう、タルタルのタレタレに……やってはいけないのですが、やってしまいました。本当は、クリアー塗料が垂れる寸前でやめてそれを繰り返さねばならないのに、面白くなってジャンジャンと、じゃぶじゃぶになるまでクリアーをかけてしまいました。とはいえ、まあ、とりあえずデカールがおかしくなることもなく、そもそもクリアー塗料は透明なので、見た目的にも違和感なく、クリアーがけは終わりました。
そして、クリアーが乾くのを待ちます。1日だと、おそらく乾きません。少なくとも3、4日は置いたほうがいいと思いますね。表面を触って、指が引っかかるようなら、まだ乾いていませんし、組み上げ時に隠れるような場所があれば、そこを爪などでグッと押してみれば確認できます。見た目で乾いていそうでも、爪の跡が残ったりしますから。
こうして乾ききったな、と思ったら、ここからは研ぎ出し作業のお楽しみです。クリアーをかけたパーツの、デカール部分を狙って1000番もしくは1200番の紙やすりを当てていきます。1200番だとあんまり削れないので、私は1000番からにしています。これは力加減だったり器用さも関係しますから、試してみてください。
実際にやすりがけしてみると……
そして、デカール面を平滑にしたら、お次はツヤを出していきましょう。このままだと、平らになったはいいが、紙やすりのせいでお肌がザラザラのままですなので。それにはコンパウンドを使いますが、その前に。まだ1200番ではコンパウンドを使うにはザラザラがキツすぎるので、1500番→2000番の紙やすりは当てておきます。
なお、ここでひとつご注意を。紙やすりの番手を上げていくとき、そしてこれからコンパウンドも番手(?)を上げていくわけですが、ひとつのパーツを手に取り「1000→1200→1500→2000」とかけおえて、また別のパーツを1000番から……とやると、そのうち「アレ? このパーツどこまでやったっけ?」とか「あ、このパーツまだやってなかった」など混乱してしまう可能性が出てきます。
なので、行程上可能であれば、1つの番手で全部のパーツをやり終えてから、次の番手に移ってみてください。そのほうが効率的です(まあ、僕の場合は、ですが)。
さて話を戻して。パーツをならし終わったら、コンパウンドの登場です。そういえば、コンパウンドを知らない方のために念のためご説明しますと、これは研磨剤です。ヌルヌルの液体の中に細かい研磨剤が入っていて、それをもって対象物を磨くわけです。よくYou Tubeで汚い10円玉をピカピカにする動画がありますが、あれで使われているのもコンパウンドですね。
左から、GSIクレオスの「Mr.コンパウンド細目」、「Mr.コンパウンド極細」、ハセガワの「セラミックコンパウンド」、そして最後はコンパウンドではなくて、ツヤを出すための「コーティングポリマー」です。この4つを順番に使うことで、ツヤツヤになるはず。
まずはMr.コンパウンド細目から。製品には磨く際に使用する布も付属していますから、それを使います。別売りのものもありますので、お好みで。コンパウンドは、直接布に取り出して使うのではなく、お皿などに取り出し、なくなったら順次布に補給して使うほうがやりやすいと思います。
そして、コンパウンドは布を使って磨くものではなくて、あくまでもコンパウンドを使って磨くものなので、ゴシゴシやらずに、感覚的にいえば、ぬりぬりとコンパウンドそのものを滞留させる感じで磨いていくのがよいでしょう。
こうして細目の作業を終えたら、コンパウンドを完全にパーツから取り除かねばなりません。基本粉なので、けっこう細かいところに入り込んだりするんですよね。今回は、水に浸けたあとに、コンパウンドが入り込んでしまったところは歯ブラシを使って取り出しました。
コンパウンドが表面に残っていると、次に極細を使ったときにダメージを受けますので、きっちりと取り除いてください。
そのあとは、極細をかけていきますが、極細をかけた段階で、もうツヤッツヤになってきます。さらにセラミックコンパウンドとコーティングポリマーで、めちゃくちゃきれいになるのですが、そのあたりは以下の写真を見ていただいたほうが早いかなと。
こうして、ひとつひとつのパーツを慈しみながらコツコツと作業をこなしていくと、鏡のようなパーツができあがります。
では、今度こそ最終最後、パーツを組み上げてみましょう!
……まあ、ぶっちゃけたところ、デカールの有無ほどインパクトはないかもしれないですね。ただし、それは写真のうえでの話です。質感的には、まったく別物になるとだけは言えます。ちょっとアップで見てみましょう。
これにて、今回のデカール編を終わります。デカールは、水に濡らして貼るだけといえばそのとおりなのですが、自分なりに「このマークをここに使ってみよう!」といった工夫もできますし、やればやるほど面白い。さらにクリアーをかけたり研ぎ出しをすれば、よりいっそうきれいな完成品になります。
……まあ、今回私が作ったものが成功とは言いませんし、お手本になるとも思えませんが(笑)、ともあれ作った後の充実感はめちゃくちゃスゴい! 超楽しいです! そして、実は今回、特別な作業はしておらず、ひたすら手間だけがかかったものになっています。つまり、やろうと思えば未経験でもできてしまうわけです。
そして、プロモデラーの、特に車や飛行機の作例などはおおいに参考になると思いますので、この記事をきっかけにプロの作例(店頭に飾られていることも多いですしね)や記事をぜひご覧になってください。丹念に作られた作例は、ほんとうに美しいので。みなさんが、少しでもプラモデルを楽しんでくだされば、幸いです。
(C)創通・サンライズ